トピア内野手の463トピア

ライター・トピア内野手のブログ。野球やドラマや思う事などなど。

想い出尽きない魔将の男

「ヤクルトファンの意地を見せてやる!」

6月3日、神宮球場の三塁側内野A指定席で叫んだ。もちろん心の中で。勝利投手の西武佐野のヒーローインタビューを聞きながら、怒りに震え球団公式サイトにアクセス。もちろん翌日の試合チケットを取るためだ。

館山の今季初登板は1イニング3ホーマーを打たれ3回4失点。11-2で5連敗を喫したスワローズ。得点は山田哲人の2ランホームランのみ。交流戦5戦全敗。毎年パリーグにカツアゲされている。完全に力負けしたけれど、明日こそは交流戦勝利を見届けてやる!完全に意地だった。俺はいつでもムキムキムキムキムキになる。絶不調の山田が今度こそ復調するかもしれない。鵜久森が逆転満塁ホームラン打つかもしれない。誰か打つでしょ!そろそろ爆発するでしょ!? とドリーム溢れるスワローズ。野球はドラマだし、人生だ。スワローズには博打のような魅力がある。

翌日、ある選手が二軍から上がってきた。ディーン・グリーン。巨漢で左打ちの内野手。淡々と負ける現状、ムードを変えてくれるだろうか?

この日も先制され最大6点差をつけられるスワローズ。8回に4点差に迫る2点タイムリーツーベースを打ったグリーン。その後センターフライでグリーンの足じゃ無理だろうと思いきや、二塁から三塁へタッチアップ!ドスドス…と聞こえそうな走塁ながらもしっかりセーフに。ファンの間で少しの笑いと大きな喜びが溢れた。私はグリーンの一生懸命さに心洗われた。「プロは結果残してナンボ」という意見は当然だが、全てのプレーが結果に直結するわけではないからこそ、勝つためにどうプレーするかが大事だと思う。ベンチ、ファンの士気を上げたタッチアップは得点に繋がらなかったが、9回にも1点差に詰め寄るタイムリーを放ち3打点の活躍。結果は8-8の引き分け。ただの意地で行った試合で、野球の面白さ、楽しさをグリーンが改めて教えてくれた。

9回裏2アウトのグリーンのタイムリー直後、大引の打球を西武源田が悪送球して同点になった。名手に珍しいエラー。アレ…? なんか見たことあるぞ。ファンに愛された外国人選手、アーロン・ガイエルを思い出した。

ガイエルは見ていてとにかく楽しかった。記録よりも記憶に残る、数字以上のワクワク感があった。ガイエルがいるだけで不思議な事が次々起こる。平凡な打球を野手がエラー。古田の引退試合では野手が交錯しランニングホームラン。突如投手のストライクが入らなくなり四球で出塁。チームで一番ホームランを打っていても、バットを振らず、もしくは何かが起こり出塁した印象のほうが強い。数字を見てみると出塁率がずば抜けており、打率より1割以上も高い。NPB 5年で通算打率.236、出塁率.357。ホームラン90本。意外と打ってるホームランも含めなんとも味わい深い。死球も多かったが、全く怒らない紳士だった。始球式でもFC東京平山相太に当てられた。しかしなぜ打者ガイエルだったのだろう? あの日は五番だったのに。死球式を予期していて一番の川島慶三を守るため? むしろガイエルだから当たってしまった? 謎は深まるばかり。

地方球場のスコアボードで、ガイエルの名が「八王子B」と誤表示されたことも。空間を操っている、魔将ガイエルと呼ばれ(ネタにされ)愛されていた。「魔将」はネット発祥のあだ名だが、某夕刊紙がチクッたため本人公認だ。契約が危ぶまれた際「このチームで優勝したい」と球団に手紙を書き残留。チーム愛があり、常に全力プレー。成績、人柄、珍事の絶妙なバランス。誠に遺憾ながら、故障と外国人枠の関係で2011年に退団。私は絶望した。ガイエルはいてくれるだけで良かったのに。

エピソードが尽きないので追いガイエルさせてもらいたい。

ある日デントナが放ったポール際のホームランを中日落合監督(当時)がファウルだと抗議している最中、ガイエルNPBの温暖化防止スローガンの「Let’s 省 Time!」ボードをベンチで掲げニッコリ。当時はビデオ判定がなく、長引く抗議を皮肉っていたのだ。そして翌年ビデオ判定が導入され、適用第一号はガイエルのホームランだ。歴史に名を刻む!さすが奇跡を呼ぶ男。

一番印象深いのは、イ・ヘチョンが中日森野に死球を当て乱闘が起こったときのガイエルだ。ライトの守備位置から猛ダッシュ!ライトスタンドから観ていたが、背中がみるみる小さくなるほど俊足だった。仲間を守るため外野からマウンドへチャージ掛ける選手ほかにいるだろうか? あれから何度も乱闘を見たが、ガイエルは誰よりも速かった。

グリーンのホームランはガイエルの弾道に似ている。フォアザチームな姿勢も。ルーキやギルメットも巻き込み、ベンチから念を送るグリーン。何かが起こりそう。ガイエル以来の期待感が日に日に高まっている。

グリーン、これからもよろしく。2代目魔将になってください。
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以上、文春野球フレッシュオールスター落選作となります。文章は全く直してません。送ったままです。

【自己レビュー】
ガイエルとグリーンへの情熱、ヤクルトスワローズ愛だけは伝わるコラム。

②エピソードが多すぎる。いくつかに絞ってひとつひとつ詳細を書いた方が伝わりやすかったかもしれない。エピソードの多さにこだわったので後悔はしていませんが、今後気を付けます。

③そもそもフレッシュオールスターなので、今いる選手を題材にしたほうが良かったのではないか?とそもそもの疑問。過去より未来。でもどうしてもガイエルが書きたかったので後悔していない。

④魔将、追いガイエル(追いオリーブの流用)等ネット用語が多いので醒められた可能性あり。追いガイエルに至っては完全なる悪ふざけ。あのとき、私はどうかしていた。

パリーグにカツアゲされているは例えとしてイマイチ。

⑥スコアボードに誤表示のくだり、唐突で接続詞がないので気持ち悪い。違和感がある。

⑦最初の「ヤクルトファンの意地を見せてやる!」のくだりはいらなかったかもしれない。そのときの心境を描写したかったので入れたが、読者からは本題に入るのが遅い!となっている可能性あり。

このブログは文春野球フレッシュオールスター開催前、出場選手発表前に書いております。
そのため的外れなところもあると思いますがご留意ください。
自分の文章がどうだったかということのみに焦点を置いております。
連載中の必殺勤め人では使えない内容なので、こちらで発表させていただきまた。
お読みいただきありがとうございました。

2017年7月12日 トピア内野手
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2017年7月15日 追記
後出しになるのが嫌で書いていなかったのですが、自戒の念を込めて書きます。
掲載された8作品を見て、私の文章にはドラマがないから載らなかったんだなと強く痛感しました。
人それぞれ、思い入れやドラマがあって……伝わるものがありました。

イースタンDeNA】1998年10月8日、池袋東口で
http://bunshun.jp/articles/-/3320

黒田創さんの作品がとても素晴らしく、グッと来ました。勉強になりました。
横浜ファンのみなさま、それ以外の方もぜひ読んでみてください。
残念ながら投票はもう終わっておりますがおすすめです。

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。